

Webサイトやアプリを新しく作成するときは、目的達成に向けた全体構成を最初に明確にすることが肝心です。
中でもワイヤーと呼ばれるフレームによる設計段階がスムーズに進められるかどうかで、UIの質やUX全体の完成度が大きく変わります。
たとえば「何を、どこに、どのように配置するか」を最初に検討しておくだけで、デザイナーから開発チーム、さらには会社の決定権者まで、必要な要素を共有しやすくなり、段取りの見通しが一気によくなります。
本記事では、Web制作やアプリ開発に欠かせないワイヤーフレームの基本的な役割から、必要とされるUI要素とUX視点を組み合わせた段階的な設計方法を詳しく説明していきます。
状況や目的に応じて、どんな情報が最優先になるのかをいったん整理し、ページ単位で画面構成を考えていくとリスクを減らしやすいでしょう。
途中で問題点が見つかった場合も、ワイヤーフレームの段階であれば修正が簡単です。無料ツールやテンプレートを活用すれば、複数名が同時に編集・確認を行うことも可能なので、より効率的にプロジェクトを推進することができます。
さらに、マーケティングの面でもワイヤーフレームは使い道があります。
たとえばヒートマップなどを連携させれば、多くのユーザーがどのようにページを利用しているかを可視化できるので、ボタンやテキストの配置を微調整するときに役立ちます。
こうした具体的なデータから得られるインサイトをもとにワイヤーフレームを更新すると、プロトタイプを完成させるまでのプロセスがスムーズになります。今回の解説を読み進めることで、UIとUXの両面から「わかりやすい」そして「目的に合った」設計を実現するためのヒントが得られるはずです。
ではさっそく、ワイヤーフレームの重要性とUI設計の目的について見ていきましょう。
【初心者必見】ワイヤーフレームの重要性とUI設計の目的を解説
ワイヤーフレームを作る最大のメリットは、Webサイトやアプリ全体を俯瞰できる点にあります。
どのページにどのコンテンツや機能を配置するかが一定のフレームで示されるため、デザイナーもエンジニアも、最初の段階から完成形の青写真を共有しやすくなるのです。
たとえば、会社で新規サービスを立ち上げる際、まだビジュアル制作やプログラミングに着手していなくても、ワイヤーフレームがあるだけで「ここが重要なページ」「ここはユーザーが頻繁に見る画面」といった優先順位が明確になります。
目的がはっきりしているほど、ワイヤーフレームでの設計が役に立ちます。
何をゴールとするサイトなのか、あるいはアプリなのかによって、要素の配置は変わるものです。
たとえばECサイトならば商品検索や購入ボタンの配置が優先されるでしょう。
逆に、情報発信が主目的のブログ系サイトの場合は、文章を読みやすく整理し、関連情報を適切に織り交ぜる構成が求められます。こうしたUI設計はユーザーの行動を想定し、UXを改善していくための基盤となるわけですが、その基盤を形にする最初の道具がワイヤーフレームだというわけです。
ワイヤーフレームを使いWebサイトの骨組みを理解する基本を解説
ワイヤーフレームの最初のステップは、サイト全体の目的と機能の洗い出しです。
たとえば企業のコーポレートサイトならば、会社情報やサービス一覧、採用ページなど、どのようなコンテンツを用意するかが重要となります。
その次に、各ページの役割をテキストベースで書き出し、段階的に配置を決めていくことで、全体像が見えてきます。必要があれば、メインビジュアルの位置や問い合わせボタンの配置など、ユーザーが迷わない導線を考慮してレイアウトを組むとよいでしょう。
また、無料ツールの活用もおすすめです。
PowerPointやGoogleスライドなど、意外なところにワイヤーフレーム用のテンプレートが用意されており、画面構成の初期案を作成するのに適しています。
さらに、ヒートマップツールをあらかじめ仕込んでおけば、運用開始後にユーザーの行動を確認しながら、メインで使われるページがどこなのか、問題点がどこにあるのかなどを把握しやすくなります。
こうしたデータとワイヤーフレームが連動すると「仮設→検証→修正」という基本プロセスを繰り返せるので、UI設計の質が自然と高まります。
UIデザイナーが知っておくべきワイヤーフレーム作成の段階と設計ポイント
UIデザイナーにとって、ワイヤーフレームの扱いは切り離せないものです。ビジュアル面へのこだわりはもちろん大事ですが、それ以前に「どんな要素が必要か」を洗い出し、情報を整理しておくことがUX価値を高めるカギになります。
たとえば、流れの中でユーザーが最も求める情報を画面の中央付近に配置し、連続して操作する必要があるボタンをわかりやすい場所に置くなど、最適なレイアウトを検討できるのがワイヤーフレームの段階です。
注意すべきは、ワイヤーフレームの段階でデザインを作り込みすぎないことです。配色や具体的なイメージはまず後回しにし、要素の上下や配置の優先度を整理します。
そのうえでデザイナーや制作陣が議論を重ね、視覚的なルールや色のトーンを決めていくことで、最終的なビジュアルデザインに無駄が生じにくくなります。
多くの場合、ここでビジュアルを決め打ちしてしまうと、後々のプロトタイプ製作時や開発時に修正が連発する恐れがあります。
UIデザイナーが途中段階からワイヤーフレームを共有しつつ作業することで、チーム全体が「今はどこまで考えなくていいか」を理解し、必要な形で追加・修正を進めやすくなるでしょう。
エンドユーザー目線で必要な要素を整理し段階的に配置する方法を解説
エンドユーザーが実際に利用するとき、どのコンテンツに注目してどこで行動を起こすのかを予測しながら、複数ページにわたる構成を決めることが大事です。
サイトやアプリを設計するとき、「ユーザーは何を第一に探すか」「最もクリックされるボタンはどこにあるか」といったポイントへ配慮するだけでも、UX全体が向上しやすくなります。
こうした思考を段階ごとに行うことで、画面ごとの目的があいまいになるのを防ぎます。
具体的には、最初の段階では一気に作りこまず、ページ単位のラフを複数用意して、ユーザーの行動イメージをチームで共有するのがおすすめです。
たとえばメニュー配置や画像の配置、テキストの配置、検索フォームの位置など、UXに大きく影響する要素をワイヤーフレームで順番に配置したら、ユーザーテストやチーム内レビューでその画面が「使いやすいかどうか」を評価します。修正箇所が見つかれば、まだビジュアルを入れていない段階なので比較的簡単に変更できます。こうして少しずつ全体を整えていくことが、スムーズなUI設計につながるのです。
Web制作でワイヤーフレームを効果的に活用し問題点を明確化する方法
ワイヤーフレームによってWeb制作の初期段階から問題点をあぶり出しておくと、あとで大きなコストをかけずに修正ができます。
具体的なフレームが存在すれば、関係者全員が同じ画面を見ながら「どのページが足りないのか」「どの要素が重複しているのか」を簡単に洗い出せるため、無駄な議論を大幅に省けます。
たとえば、トップページからの導線が複雑になっていないか、新規ユーザーが欲しい情報にたどり着けるかなどをワイヤーフレームでシミュレーションすると、開発前の段階で課題が一目瞭然になる場合があります。
また、ワイヤーフレームの内容を基準にディレクターやデザイナーが会議を行うと、同じ土俵で意見交換が進むため話がスムーズです。
図や文章で指示を出すだけではイメージのずれが起こりがちですが、ワイヤーフレームという視覚的な道具があれば、既存のページに何を追加するか、どこを省略するかなどが明確に浮かび上がります。問題点がクリアになった状態で先に進めば、UIデザインから開発、検証、公開といった工程にも余裕が生まれやすいのが利点です。
具体的な事例を用いてワイヤーフレームで確認すべきポイントを解説
たとえば、ECサイトの事例を考えてみましょう。
ユーザーが最初に見るトップページにはどんな情報を配置すべきか、商品一覧ページではどのような並び順が使いやすいかなど、目的別に画面を作成する必要があります。
商品検索フォームを設置するなら、ボタンの色や配置場所も検討対象です。
ユーザーが検索を行いやすく、そのまま商品ページを閲覧して購入までスムーズにつなげるフローを、ワイヤーフレーム上で整理しておくわけです。
この段階で不足要素や過剰な要素を発見できれば、その後の開発・デザイン工程で大規模なやり直しを回避しやすくなります。
また、ワイヤーフレームをチーム全員で確認するときは、各人が気づいたポイントをリスト化しておくと便利です。
- 商品詳細ページに取扱説明やレビューを表示するかどうか
- 支払い画面を分かりやすくするためのUI要素は何が必要か
- サイト内で色を統一する際の基本ルール
こういった内容が具体化すれば、デザインカンプやプロトタイプ製作に進むときも共有が容易で、開発効率が格段にアップします。
ユーザーUXを高めるボタン配置とレイアウト設計の基本ステップ
UXという観点から言えば、ページや画面内で最もユーザーが使うボタンやリンクをどこに置くかが大きなポイントです。
視線が集まりやすい箇所はどこか、操作しやすいボタンサイズになっているかなど、細部を検討するにはやはりワイヤーフレームが役立ちます。
ワイヤーフレームを用いて、主要なCTA(Call To Action)を目立たせる場所に配置し、必要に応じて余白を設けておけば、ユーザーが自然に次のアクションに進みやすくなります。
また、配色を考える前にレイアウトを固めておくと、多種多様なデザイン案から迷走するリスクを避けられるメリットがあります。
先にレイアウトの意図がはっきりしているため、具体的な色やフォントを決める段階でも「最もクリックしてほしいボタンはコントラストを高めに」など、明確な理由づけでデザインできるのです。
こうした基本ステップを踏んでおけば、後々の修正時間を大幅に抑えられ、結果的に全体の作業時間を短縮できるでしょう。
コンバージョン率向上を目指す場合のUI要素とカラー選定のヒント
コンバージョン率を高めたい場合、UI要素の配置とカラー選定が非常に重要です。
たとえば、購入ボタンをサイトのベースカラーとは反対色にして強調したり、フォーム入力欄を余計な情報で埋め尽くさないようにしたり、細やかな工夫が成果に直結することがあります。
ワイヤーフレームでトーン&マナーを把握したうえで色を検討すると、「ここは必ずユーザーに見せたい箇所」「ここは注意を引きたい項目」といった優先順位が自然に固まりやすいでしょう。
色だけでなく、レイアウトの工夫も大切です。
例えば、キャンペーン情報をトップページの中央かつ大きめのエリアで表示し、詳細ページへ誘導するボタンを見やすい位置に置くと、多くのユーザーがそこに反応しやすくなります。
こういった決断をする際、ワイヤーフレームで画面全体の動線をイメージしておくと直感的に判断しやすくなります。
コンバージョン率の向上を狙うなら、ユーザーが興味を持つ要素に自然と触れられるUIを設計することがポイントです。
ワイヤーフレーム作成時に活用したい無料ツールとテンプレート一覧
ワイヤーフレームを合理的に作成するためには、FigmaやMiro、さらにはAdobe XDやパワーポイントといった各種ツールが活躍します。
特にFigmaやMiroはクラウドベースで複数人が同時に編集できるため、リアルタイムで変更・追加を共有しやすいメリットがあります。また、無料プランでも十分にワイヤーフレーム作成が可能な場合が多く、テンプレートを活用すればレイアウト設計の下準備がグッとラクになります。
たとえば、Miroにはプロジェクトの進行度ごとに使えるホワイトボード形式のボードが用意されており、そこにワイヤーフレームを貼り付けてアイデアをどんどん書き込めます。
Figmaであれば、ボタンやアイコンなどのUI要素がまとまったテンプレートが数多く提供されており、一から作る手間を大幅に削減できます。
これらのツールを試す前に、サイトやアプリの目的や優先事項をチームで話し合っておけば、テンプレートの選び方も絞り込めるでしょう。
FigmaやMiroなど複数人で共有可能なオンラインサービスのメリット
オンラインでワイヤーフレームを共有する利点は、何と言っても「即座にフィードバックを得られる」点です。オフィスに集まらなくても、各自が同じ画面を見ながらコメントを書き込めるので、メールやチャットツールで説明を繰り返す無駄を減らせます。
ワイヤーフレーム上に描かれたボタンやテキストの配置に対する細かい意見も、その場で付箋のように追記していくことができるため、プロジェクトを円滑に回しやすくなるでしょう。
また、FigmaやMiroでは、前のバージョンに簡単に戻れる機能があり、万が一のときにも復元しやすいのが特徴です。
開発スピードを重視する企業では、この素早い修正対応がとても重宝されます。
視覚的に編集状態がわかりやすく、共同編集中に誰がどこをいじっているかがリアルタイムで表示されるため、チームメンバーの役割分担を明確に保ちやすいのも大きなメリットです。
ワイヤーフレームの修正・変更をスムーズに行うためのチーム連携の重要性
どんなに優れたワイヤーフレームも、プロジェクトの進捗や新しいアイデアが出てきたタイミングで修正や変更を行わなければ意味がありません。そこで大事になるのがチーム連携です。
ディレクターやデザイナー、エンジニア、マーケターなど、それぞれが異なる視点を持っているため、ワイヤーフレームに対する要望も様々でしょう。
その要望を一か所に集約し、優先度をつけて編集を進めることで、二度手間や認識齟齬を最小限に抑えられます。
また、企業の担当者と外部の制作会社が共同開発を行うようなケースでも、ワイヤーフレームが橋渡し役となってくれます。
たとえば、ページのどこにロゴを置き、どこに利用規約やプライバシーポリシーへのリンクを配置するかなど、細かな部分も事前に設計図として表しておけば、クライアントからの意見を聞いて軽微な修正をすばやく行えます。
こうした段階を積み重ねていけば、最終的に「こんなはずではなかった」というトラブルを回避しやすくなります。
レビュー段階で追加すべき内容を明確にし開発プロジェクトを円滑化する方法
ワイヤーフレームをひととおり仕上げたら、レビュー段階でしっかりチェックを行いましょう。
特にユーザーが実際に使う流れを具体的にシミュレーションし、疑問点があれば簡単なモックアップで動きを再現してみるのも有効です。
企画やディレクションを担当する人は、全体のサービスコンセプトや会社のポリシーに合致しているかを確認し、開発チームは完成後の実装コストを見積もりながら「この機能は本当に必要か」を検討するとよいでしょう。
また、レビュー段階だからこそ見えてくる問題もあります。たとえば古いバージョンのブラウザやスマートフォン画面のサイズへの対応など、リリース後に顕在化する恐れのある課題を洗い出す機会としても活用できます。
チーム各所から寄せられた意見をまとめる際は、優先度の高いポイントから対応するとプロジェクト全体の混乱を防げます。
こうして追加や変更を調整したうえで、いよいよ次のステップである具体的なUIデザイン制作に入れば、完成度の高い成果物が期待できるでしょう。
UI設計とワイヤーフレームが混同されやすい理由とそれぞれの役割
ワイヤーフレームとUI設計は、どちらもデザイン工程の一部のように思われがちですが、本来は重視しているポイントが異なります。
ワイヤーフレームはあくまで「構造の整理」を目的とした設計図です。いっぽうUI設計は、見た目のデザインやユーザーインタラクションまで含めた「使いやすさと視認性」を追求する工程となります。
ただ、最終的なゴールはどちらもUX向上にあるため、初学者は混同してしまいやすいのでしょう。
実際には、ワイヤーフレームによって配列や情報構成を整理し、それをもとにUIデザインで色やアイコン、フォントなどのビジュアル要素を乗せていく流れが理想です。
ここで順序を間違えると、デザインを仕上げた後に「やっぱりこのコンテンツは要らない」「この機能は別のページに回そう」といった話が出て、再びワイヤーフレームレベルからのやり直しになることもあります。
時間と労力を節約するためにも、ワイヤーフレームとUI設計の役割をしっかり分けて考えることが大切です。
デザインカンプとの違いを理解しプロトタイプ制作をスムーズに進めるコツ
デザインカンプは、ワイヤーフレームで決めた構成にビジュアルスタイルを加えた完成イメージを示す資料です。
色やアイコン、フォントサイズなど、実際にユーザーに見せる画面とほぼ同じ見た目に仕上げるため、クライアントとの認識を合わせる際に大いに役立ちます。
一方、ワイヤーフレームは白黒や灰色などシンプルな図でパーツの配置関係を表すだけなので、デザインカンプほど視覚的なインパクトはありません。
とはいえ、ワイヤーフレームをしっかり作り込んでいれば、デザインカンプの製作段階で「配置を根本的に変える」という大掛かりな修正を避けやすくなります。
プロトタイプ制作を最短ルートで進めるコツは、このワイヤーフレーム→デザインカンプの工程を段階的かつ論理的に行うことです。
必要機能が明確に整理されたワイヤーフレームをもとに、デザインカンプで全体の印象を固め、クライアントやチームから承認を得たうえで初めて開発フェーズに進むのが理想的な流れと言えます。
ここで急いでビジュアルを詰めすぎると、後からサービスの方向性やページの目的が変わったときに修正が難しくなるので、焦らず段階を追うことが成功の秘訣です。
最後に:ワイヤーフレームによるUI設計の全体像をまとめて振り返る
ワイヤーフレームは、Webサイトやアプリの制作プロセスにおいて、最初の段階で使う「見取り図」です。サイトやサービスの目的を定め、その目標を達成するためにはどんなページや機能を用意し、どう配置すればよいかを現場全体で共有するために極めて重要な役割を果たします。
ビジュアルデザインや開発に入る前に、ワイヤーフレームで情報量の調整や動線の確認を徹底して行っておくと、後工程での修正が最小限で済みます。
また、チェックと修正を何度か繰り返すプロセスで、UX向上のための細かな工夫が自然に浮かび上がってきます。たとえば、今のレイアウトではユーザーが目的の情報を見つけにくいのではないか、スクロール量が多すぎて時間がかかりすぎないかなど、具体的な問題点をワイヤーフレーム上で初期発見できるのです。
そこから色やフォントをどう見せるか、デザイナーやマーケターがアイデアを加えてUIを完成形に近づけていくという段階的な流れが、理想的かつ生産性の高い制作手順といえるでしょう。
最終的に、ワイヤーフレームからデザイン、そしてプロトタイプを経てリリースまでの道のりを踏むことで、誰もが「この画面はどういう意図で作られたか」を理解しやすくなります。
UI要素の配置や色の意味も、コンテンツの必要性も全員が納得しながら決定できるため、チーム全体の連携と作業効率が大幅に向上するのです。
もしこれからWebやアプリの新規開発、あるいは既存サービスのリニューアルを検討しているのであれば、ぜひワイヤーフレームというツールを積極的に取り入れてみてください。順を追ってフレームを固める作業は、きっと将来の制作や運用に大きなメリットをもたらしてくれるでしょう。